大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2850号 判決

本籍

群馬県碓氷郡松井田町大字松井田六四六番地

住居

高崎市江木町二七六番地

製材業

吉田兼造

明治三一年八月一日生

右の者に対する経済関係罰則の整備に関する法律違反被告事件について、昭和二四年六月二九日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人海野普吉、位田亮次の上告趣意について、

原判決が被告人の判示地方木材株式会社配給部第一課長たる職務内容として説示するところは同判決挙示の証拠によつて、これを認めることができる。しかして、辰口武重は中島飛行機株式会社小泉製作所の代理人として判示のごとく、前示木材株式会社から木材の供出を受領するに当つて、同社配給部第一課長たる被告人に頼み、特に被告人の管掌事務を迅速に処理して貰い、その結果、右供出を他の請負業者よりも早く受領することができたこと、同人は、右のような便宜な取計らいを受けたことを謝すると共に、爾後も引き続きかかる取計らいを受けることを要望して、その報酬の趣旨を以て判示金員を被告人に供与し被告人も、その趣旨を了承しながらこれを受領したものであることは、原判決摘示の事実と同挙示の証拠とを照合することによつて十分に理解し得るところである。(尚、被告人がその管掌事務を特に迅速処理することによつて、辰口武重のために便宜の取計らいをなし得る関係にあつたことは、亦、原判示からおのずから明らかである)しからば、右金員の供与が被告人の、職務に関するものであることは極めて明瞭であつて、論旨は原判決の趣旨を理解しないことに基くものでこれを採用することはできない。

よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。

右は、全裁判官一致の意見である。

検察官 安平政吉関与

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例